コラム
RFIDとは?③~UHF帯パッシブRFタグと位置情報編~
前回の記事では、現在最もよく利用されているUHF帯パッシブRFタグについて、その導入ポイントをご紹介しました。
今回は、「RFID」を物品の位置情報取得に活用する方法などに触れてみたいと思います。
もくじ
よくある誤解
「RFタグを物品に装着するだけで、それがどこにあるのかという位置がすぐにわかる・・・」というイメージをお持ちの方が非常に多いように感じます。
2016年頃によくTVで放映されていた某大手ロジスティック会社のCMの影響も大きかったのかもしれません。
しかし、「RFID」を利用して位置情報を特定するのは、実際には課題も多く容易ではありません。
例えば、以下のような点に留意が必要です。
- タグの読み取りに使うリーダーライタや固定式のアンテナの数が想定以上に必要で高額になる
- 周囲に金属の多い環境では電波の反射が多く精度の良い位置情報が得られない
- 物品が置かれている場所を少し遠くから探索できるが、ラスト1個にたどり着きにくい
「RFID」による位置検知の各種方法と特徴
UHF帯パッシブRFタグを物品に取り付けて、その位置情報を取得するいくつかの方法とその特徴を以下にご紹介します。
固定式アンテナの設置位置を位置情報に利用する方法
【方法と特徴】
一般的な据え置き型リーダーライタは複数枚のアンテナを接続*1)でき、どの位置にあるアンテナがどのタグを読んだのかを確認することで、物品がアンテナの近くにあることがわかります。
ただし、タグが発する電波は複数のアンテナで受信されることがあるため、タグの位置を確定するためにはひと工夫必要になります。
- アンテナが受信した電波の強さ*2)が最大のもので代表させる方法(比較的簡便な確定方法)
- 複数のアンテナで受信したタグの電波強度を計算することによって、タグの位置精度を向上させる方法
なお、固定式のアンテナは天井や壁又は土台に設置されるタイプがほとんどですが、特殊なフィルムに無数の小さなアンテナを形成したシートを棚などに敷いて使うことで、比較的小型の物品に対して位置を把握できる特別なタイプもあります。
*1)1台のリーダーライタあたり4枚~16枚のアンテナを接続できる機種が多い。また、外部のオプション機器を利用することでさらに多くのアンテナを接続できる機種もある。
*2)受信した電波の強さをRSSI(Received Signal Strength Indicator :受信電波強度)という指標で比較することが多い
【課題】
この方法の最大の課題は、倉庫などの広い場所で精度良く位置情報を取得したい場合、複数の据え置き型リーダーライタや多くの固定式アンテナが必要となり、設置工事代等も含めて初期費用が大きくなりがちなところです。
ハンディー型リーダーとスマートフォンの位置情報を組み合わせる方法
【方法と特徴】
スマートフォンに搭載されている様々なセンサには、位置の取得に活用できるものが多くあります。それらのうち、業務での位置情報取得によく利用されるものが以下の二つです。
- GPSやみちびき等の衛星電波(GNSS)の受信(主に屋外で利用、Wi-Fiやキャリアの基地局情報で補正されて精度が向上)
- Bluetoothを利用したビーコンを受信(主に屋内で利用)
ハンディー型リーダーで読み取った物品のタグ情報を、スマートフォンの位置情報とセットで取り扱うことで、物品の位置情報を知ることができます。
【課題】
ハンディー型リーダーとスマートフォンの台数が少なくて済む場面では初期投資も小さく、比較的手軽に導入可能な方法ですが、例えば、金属でできた材料や装置が多い屋内工場など、周辺環境によっては十分な精度が得られにくいという課題があります。
固定設置した位置用RFタグ(以下位置タグ)をハンディー型リーダーで同時に読む方法
【方法と特徴】
あらかじめ特定の位置に設置した位置タグと物品タグとをセットで読み取ることで位置情報を取得する方法で、入出庫や棚卸しを位置情報付きで行えるようになります。
比較的安価に導入でき、かつ周辺環境の影響を受けにくいように柔軟な運用ができるという特徴があります。
ハンディー型リーダーは、人が携行したり、運搬台車やハンドリフト等に固定したりして利用しますが、据え置き型リーダーをフォークリフトに搭載して利用することも可能です。
また、AMR(Autonomous Mobile Robot)と呼ばれる自律走行搬送ロボットにリーダーを取り付けて、人の代わりに棚卸しを実施するといった使い方も現実的になってきました。
【課題】
位置精度を上げるためには多くの位置タグの設置が必要になりますが、そのために適切な場所が確保できるかどうかが、この方法の最大の課題となります。
表示装置を組み合わせたタグ
UHF帯パッシブRFタグを装着した物品の位置を、現場の作業者に直接知らせる方法として、表示装置を搭載したタグの利用も有効です。
以下に2つの例をご紹介します。
LED付きRFタグ
例えば、ピッキングしたい物品の位置を、LEDが光ることで知らせてくれると作業効率が向上します。
これを可能にするのがLED付きRFタグで、物品に装着されたRFタグが作業者から目視できる場合に限って利用できます。
ただし、リーダーから照射したUHF帯電波の微少なエネルギーからLEDを光らせる電力を作る必要があるため、一般的にはリーダーとタグとの距離を数十cm程度まで近づける必要があります。
電子ペーパー付きRFタグ
電子ペーパー(一般的にはE INK方式のものを指す)は、消費電力ゼロで表示を維持できる装置で、パッシブRFタグとセットにすることで利用場面が広がります。
電子ペーパーの表示を変えることで対象物品の位置を指し示すことができると同時に、物品に関するステータスなども目視情報としてタグ上に書き残すことができます。
ただし、電子ペーパーを書き換える時に必要な十分な電力を、リーダーライタからリアルタイムに取得することが難しく、タグ側で一旦電力を蓄える仕組みが必要になります。
そのためタグの単価が高くなり、導入コストの面で課題があります。
最後に
『RFIDとは?』というテーマで3回に渡って「RFID」の特徴や使用方法についてご紹介して参りました。
「RFID」を活用した業務の効率化をご検討中の皆さまの一助になっていれば幸いです。
『物品位置管理IoTサービスXeye』を運営している株式会社ワイズ・ラブでは、20年近く「RFID」を活用したシステム開発で、お客様の課題解決のお手伝いをさせて頂いております。
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